2014年10月24日金曜日

Jodebという映像ディレクターに注目

昨今はTinasheやJhene Aiko、Banks、FKA Twigsみたいな暗くアングラな音づくりをするR&Bが流行っている。
スローテンポでFlying Lotus的なベース音、EDMでよくあるようなシンセサイザーの成すフレーズが特徴であり、ボーカルもエコーが多めにかかっていて、神秘的である。
The WeekendやFrank Oceanがつくった潮流であろうか。
あるいはFlorence and the MachineやJames Blakeなどにも影響されているかもしれない。



その神秘的R&Bの新星、Tinasheのシングル曲「Pretend」のビデオを見た。




どこかで見たことがある映像の類型を感じた。
それはZeddの『Clarity』とNe-Yoの『So Sick』だ。
カメラが人物に迫っていく感じと山や自然が感じられるところが似ていると思った。



調べてみると、やはりZeddの『Clarity』は同じディレクターのビデオだった。
ディレクターの名前はJodeb。
カナダはケベック州の出身だ。



Jodebの手掛けた作品

  • Cypress Hill & Rusko 「Roll it, Light it」
  • Deftones 「You've Seen the Butcher」
  • Underoath 「Paper Lung」
  • The New Cities 「Dead End Countdown」「Leaders of the Misled」「Looks Minus Substance」
  • Porter Robinson 「Language」「Lionhearted」
  • David Usher 「Je repars」
  • Zedd 「Clarity」「Find You」
  • Unberlin 「Unstable」
  • Sebastian Ingrosso & Tommy Trash 「Reload」




見てみると、Tinasheの「Pretend」なんかは一番おとなしい感じのビデオだ。
山の崇高性が作品に奇妙な神秘感を与えている。
しかし、彼のビデオの主な特徴は大きな自然を高画質に映すことではなく、Sci-Fi的な世界観と工数の多そうなデジタル映像処理だ。



Cypress Hill & Ruskoの「Roll it, Light it」やPorter Robinsonのビデオなんかは大変手間がかかっていそうで見応えがある。

イメージビデオとして空間に流すだけで、一種のインテリアデザインになるくらい、もはや音楽ビデオの枠組みを超えてしまっている。



個人的に一番好きなのはUnderoathの「Paper Lung」だ。




最初はおとなしめだが、雪原やお墓、大海原などのやはり「景色」でイメージ作りをした後の、後半が圧巻である。
シャウトと共に映像が赤に反転、明滅し、様々なシンボルが切り替わる。
感傷的な映像や破壊的な演出で終わりがちなハードロックの印象を変える作品ではないだろうか。



・・・



ちなみに、残念ながらTinasheとは関係のなかったNe-Yoの「So Sick」はHype Williamsというアメリカの映像ディレクターの作品だった。
調べてみると、TLCの「No Scrubs」やMissy「The Rain」、Left Eyeの「Block Party」を手掛けるなど、大御所もいいところ。
元祖未来系R&Bの映像をけん引した御仁だった。

2014年10月23日木曜日

フィラー(充填材)という概念

世間話の上手な人と話していると、前にも訊かれたことのあることを質問されることがある。
彼らの表情を見ていると、こちらの答えを訊きたいのではなくて、空間の静けさを埋めるまたは、次なる会話のための踏み台のようなものであって、こちらの答えを聞いて頭で理解している風ではない。



その場合の質問は「フィラー(充填材)」だったのだ。



フィラーといえば、軟膏に入っているワセリンや歯の詰め物に入っているガラスやセラミック、粉薬の大部分を占めるでんぷんである。
音楽で言えば、フィラーはJanetのアルバムの曲数を埋めるスキットや記憶に残りにくい曲として存在する一方、Lordeのデビューアルバムにおいては批評家から「the album completely lacked filler tracks」と評されるほど、出番がなかった。



Truth Hurtsはデビューアルバムに収録されている『Queen of the Ghetto』という曲で
What's up with these mark ass bitches
talking about their album is crazy, go cop my joint
Then only 1 song is worth listening to
and even that is shit so 3 years ago
と、同業界のシンガーたちの聴く価値の曲の少なさを批判していた。一曲しか聴く価値がないとは、残りの十数曲がフィラーということである。あっぱれな批判ぶりだ。



充填材は主成分の少なさを補うために存在する。
それ自体の効能はほぼない。



しかし、音楽アルバムで地味だと思っていた曲が段々と中毒的に頭の中に残り、好きになったことはないだろうか。
そう、実は音楽にフィラーはない。
何故なら音楽は心の持ちようやフッとした気の迷いで受け取り方が変わるものだからだ。



Lordeのアルバムは全曲、ほぼ同じような曲のつくりである。
往年のポップアルバムの様に、暗い曲があったり様々なジャンルに挑戦したりはしていない。
それゆえ、フィラーがないというよりは、全曲同じような分野の曲で、それがその批評家の趣味に合ったというだけのことだと言える。

2014年10月6日月曜日

洋楽の国内盤発売が遅い件

洋楽を聴くときはいつも国内盤CDを買っている。
日本に住んでいると、外国のアーティストがカジュアルにテレビやラジオに出演したり、雑誌のインタビューに答えたりするのを見ることができない。
そのため、国内盤同封の解説を重宝する。



経験上、解説を読んでからアルバムを聴くのと、歌詞すらない輸入盤のアルバムを聴くのは、全然作品全体の捉え方が変わる。
それは美術館でも言えることで、展示の説明を読まないで絵を見るのと、読んでみるのとでは解釈が全然違う。



だから僕には作品自体よりも解説を楽しみにしてる部分があるのだが、この国内盤CDについて、最近よく思うことがある。
それは洋楽の国内盤発売が遅かったり、発売自体がなかったりすることだ。



気になった国内盤未発売および遅れ
  • Lorde / Pure Heroin (欧米から4か月遅れて発売)
  • Iggy Azalea / The New Classic (2014.12.10発売。欧米に遅れること8か月)
  • Sam Smith / In The Lonely Hour (2015.1.21発売。欧米に遅れること7か月)
  • Sia / 1000 Forms Of Fear (2014.12.24発売。欧米に遅れること5か月)
  • Jessie J / Sweet Talker (未定)



たった5例だが、それでも英語圏では有名な受賞作ばかりだ。
思い込みかもしれないが、10年前はこんなことはなかった気がする。
売れなさそうな洋楽CDですら国内盤が発売された。
それが今では良作ですら国内盤が発売されていない。



発売の時間差は映画業界には元々見られる戦略で、洋画は本国での放映から遅れて日本での配給先が決定し、字幕スーパーがつきプロモーションとともに放映される。
音楽もそういう傾向にあるのだろうか。
単に全然売れないので、国内盤発売を減らしているのか。
あるいは、日本国内ではなく、現地でのやり方が変わってそれが日本にも影響しているのか。



いずれにしても本国での熱が落ち着いたころに国内盤を発売しても仕方ない気がする。
レーベルに分かってほしいのは、CDが売れないのは音楽の楽しみ方が変わってきているからだけれども、CDを聴く人はまだ沢山いるし、音楽自体の質が悪くなったわけではないということなのだが。

2014年10月3日金曜日

ロードの音楽はロックなのか

MTV Video Music Awards 2014で、LordeはBest Rock Videoを受賞した。
これには一般の視聴者もファンも驚いた。
確かにちょっと服装がゴシック調だけど、音楽は全然ロックではないではないか。



それで色々調べてみた。
ロックに分類される原因となりそうな要素を箇条書きにする。



  1. 以前、ロックバンドを組んでいた。
  2. パンクバンドのボーカリストであるJoel Littleがデビュー作の主要なプロデューサーである。
  3. Nirvanaと演奏をしたことがある。
  4. 他のアーティストのことに批判的に言及する。


こう見ていくと、やはりプロデューサーの力が大きいだろうか。



消去法説
積極的にロックに分類されたのではなく、消去法でロックに分類された可能性もある。
ポップ/ロックには入るだろうけど、どちらかと言ったらポピュラー(大衆的)な感じはなく、反骨精神があるし、服の色も黒いのでロックとされたのかもしれない。



とはいえ、1stアルバムはLana Del Reyを参考に作られたのであって、ファンもLana Del ReyやJessie Wareの「Wildest Moment」の延長のような、シンプルなビートとボーカルに現代批判的な歌詞を乗せたストリートライクな音楽として受け止めたはずだ。



あれをロックと言ってしまうと、ロック愛聴家も黙ってはいられない。そういうリスナー不在の放送局やレーベル、音楽団体の勝手な方針に、どれほどのファンが付いていくだろうか。



一部には「MTVがVMAsで、Ariana Grande、Katy PerryとLorde全員に賞をあげたかったからではないか」といった憶測も出ているが、そう思われても仕方がないくらい、Lordeの1stがロックと分類されるのは違和感があるのだ。

2014年8月31日日曜日

MTV VMA 2014

8月24日、MTV Video Music Awards 2014が米カリフォルニア州イングルウッドで行われた。
自分的に面白かった点は以下。



  1. Nicki Minajのパフォーマンスを唖然とした顔で見るRita Ora。Ritaって結構Rhiannaの刺客的な立ち位置だと思ってたのだけど、Nickiの巨尻の振動に完全に引いていた。品格を重んじる英国育ちにはきつかったか。それともこれはNicki VS Iggyのビーフの延長で、Iggy側のRitaとしてはそういう目つきになってしまったのか。
  2. Jessie J、Ariana Grande、Nicki Minajの“Bang Bang”におけるJessieの存在感と、ドレスを気にしてフライトアテンダントばりの不自然な良い姿勢でラップするNicki。
  3. ホームでの開催で威厳を放つSnoopとGwen Stefaniの西海岸組のBest Female Videoプレゼンター。更にKatyが受賞し、完全に西海岸組がステージを制圧する。
  4. 昔の大衆音楽みたいな、品質がほんわかゆるめなTaylor Swiftのステージ。
  5. Adeleのステージを彷彿させるSam Smithのシンプルなショー。
  6. いつの間にやらKatyの隣に座っているSam Smith。
  7. 喋らせるとやはり何かがおかしいLorde。
  8. 仕込み感があるけど、でも面白いJimmy Fallonのプレゼンでの催し―Hug cam、high five cam、give the person next to you 5 dollars cam。
  9. 今年はチャリティー、Miley Cyrus。
  10. ビヨンセの10分以上に及ぶビデオショー。



ところでここ数年のVMAのプレゼン映像が好きだ。
やはりアメリカはグラフィック制作技術の頂点の国だし、たかだか数秒の映像にも趣向を凝らした本気の作品を使うのだろう。



今年は地層学的な図表で見そうなデザインの円環状のものが海に浮かんでいる映像だった。
よく見ると、次に紹介するビデオに登場する色に合わせたレイヤーの円環となっている。
Siaの「Chandelier」は肌色、ピンク、クリーム色、Beyonceの「Drunk in Love」はグレースケールだ。



なぜ地層的な円環なのだろう。
そういったビデオがあったわけでもなく、流行があったわけでもない。
と考えると、地層はカリフォルニアの干ばつにより露わになったダムの山肌、円環は会場のThe Forumが丸いからか、ご当地のドーナツ屋さんRandy's Donutsのシンボルではないかという、かなり強引なこじつけを思いついた。



でもデザイナーの着想って、わりと論理ではなく感覚的なところがあるから、あながち間違いでもない気がした。




2014年8月20日水曜日

ファレルの曲の始まり方が一辺倒な件

あるとき、Paloma Faithの『Can't Rely On You』を聴いた後で、Jennifer Hudsonの『I Can't Describe』を聴いたときのこと――。


Pharrel Williamsがプロデュースしたこれらの曲を聴いていて、既視感ならぬ既聴感を抱いた。
どちらも同じく、四拍のビートを最初に挟んでから曲が始まる。


他にこういう始まり方をする曲といえば、パッと思い浮かぶのはGnarls Barkleyの『Crazy』やEveの『Figure You Out』くらいだ。


まさかPharrellのプロデュース曲はこんな始まりばかりなのではないか。
そう思い立って調べてみた。


すると、あるわ、あるわ、最近だけでなく数年前からこの手の技を使っていたようだ。
ここにPharrellプロデュースの主な四拍のビートで始まる曲を列挙したいと思う。

Kelis - Milkshake
Usher - Twisted
Conor Maynard - Contrast
Pit Bull - Jeaulouso
Gloria Estefan - Say Ay
T.I. - Hello
Kelly Rowland - Feet To the Fire
Jay Z - BBC
Mayer Hawthorne - Reach Out Richard
John Legend - Aim High
Nelly - Maryland, Massachusetts
Miley Cyrus - 4 x 4, #GetitRight
Kylie Minogue - I Was Gonna Cancel
Robin Thicke - Blurred Lines
Azealia Banks - ATM Jam
Paloma Faith - Can't Rely On You
Jennifer Hudson - I Can't Describe

更にPharrell本人の曲だと
How Does It Feel?
Raspy Shit
Best Friend
Angel
Young Girl/ I Really Like You
Take It Off
Stay With Me
Happy
Marilyn Monroe
Brand New
Hunter
Happy
Gust Of Wind
Know Who You Are


こんなにあるのだ。
数えてはないが、全プロデュース曲の半数近くはあるだろう。


このことは複数のインターネットメディアが報じていて、中には「Pharrell can't write good intro」などという声もあるようだ。


一方で、これはPharrellの落款だという意見もある。


音楽における落款と言えば、Rodney JerkinsやMissy Elliottなどのプロデュース曲で本人や歌手が「Dark Child」や「Missy」などと名を囁く、あれだ。


Pharrellの場合は名乗ることもなく、四拍刻んでから始まる。
音楽を奏でる者、音で勝負ということだろうか。


この四拍は一体何か、考えてみる。
楽器でこういう音を出すことがあるのは、ドラムだ。
曲を始める合図に、スティックで拍を取る。
それなら、この四拍のビートはフロアに対する準備の合図か。


では、この効能はなんだろう。
四拍打つことで、後の疾走感の予兆を伝えてくれる。


多分それは、ジェットコースターやF1のスタートシグナルなどの興奮体験を彷彿させるからではないだろうか。


しかし、これだけお決まりの始まり方をしてしまうと、四拍のビートから曲が始まることが「Pharrell」と呼ばれる日が来るかもしれない。
頭に巻くターバンがアフリカでBaduと呼ばれたことがあるように。

2014年8月2日土曜日

レディー・ガガとアンディ・ウォーホル

Lady Gagaが出てきたとき、若い世代からは斬新だと受け止められたが、その他の世代では色々な人が既視感を訴えた。
Madonnaは
She is obsessed with me
と言い、Grace Jonesは
I'd rather work with someone who is not copying me
と突き放した。



それはまるで、映画『千と千尋の神隠し』が上映された後に、複数の観光地が映画の舞台になったと主張したときのようだ。
結局映画の世界観はどの候補地にもどことなく似ているが、瓜二つの場所はなかった。
Lady Gagaも同様に、Madonnaの生き写しでも、Grace Jonesの後釜でもない。



しかしながら、彼女がもっともっと強く意識して模倣した人がいた。
それがAndy Warholである。
彼女のデビューアルバムはGaga本人は「80年代、ニューヨーク、執念」がテーマだと言ったが、それはさしずめAndy Warholという現象そのものであった。



3rdアルバム発売に際し、公式に「The intention of the album was to put art culture into pop music.」であるため
ARTPOP is reverse of Andy Warhol.
だと述べたGaga。
1stのAndyの模倣を知っている人には、これ自体には新鮮味はない。



Andyの名言集『とらわれない言葉』(アンディウォーホル美術財団編、青志社、2010年)からの言葉とGagaの1stの歌詞を見比べてみよう。



プラスチックについて
p118
ロサンゼルスが好きだ。ハリウッドが好きなんだ。美しいよね。みんなプラスチックみたいで。
僕はプラスチックが好きなんだ。僕もプラスチックになりたい。

PAPARAZZI
Real good, we dance in the studio
Snap, snap to the shit on the radio
Don't stop for anyone
We're plastic but we still have fun

BEAUTIFUL DIRTY RICH
We live a cute life
Soundfanatic
Pants tighter than plastic, honey
But we got no money



名声について
p166
誰もが15分間なら有名人になれる、いずれそんな時代がくるだろう。

THE FAME
I can't help myself
I'm addicted to a life of material
It's some kind of joke
I'm obsessively opposed to the typical
All we care about is, runway models, Cadillacs and liquor bottles
Give me something I wanna be, retro glamour
Hollywood, yes, we live for the fame
Doin' it for the fame
Cuz we wanna live life of the rich and famous



Andyはこれだけにとどまらず、ファッションや最新機器などについて、時代の先端的思考を持っていた。
Gagaはそれを再利用し、イビザのクラブ風の音楽に乗せて、クラブ文化と融合した。
有名になりたいという欲望が、SNSを通してさらに黒い怪物と化すのは、Gagaデビューからすぐの先進国でのことだった。
リバイバルとはいえGagaのコンセプトは、テレビが人々の注目を集めたAndyの時代と違い、SNSが人々の名声欲を強める時代を先読みしていたかのようであった。