2018年4月4日水曜日

ジェーン・チャンのアートな音楽ビデオ

みなさんは中国の歌手をどのくらいご存知だろうか。
僕は長らくフェイ・ウォンとジェイ・チョウくらいしか知らなかった。
それが2011年に中国に行ったときに、新たにもう一人知ることになる。
CDショップで中国の流行の音が聴きたくてジャケ買いしたアルバムが、今日紹介するジェーン・チャンのだったのだ。

僕が買ったのはジェーン・チャン(Jane Zhang)の『Reform』というアルバム。
感想としてはLady Gagaをイメージしたのかなと思った。
改変、Reform、新しい自分になるというテーマが、Lady Gagaが1stアルバムでネタにした即席的、あるいは見せかけの美を髣髴とさせた。

その後しばらく彼女のことは忘れていたのだが、2016年に面白いビデオがYouTubeにアップロードされ、久しぶりにお顔を拝見した。
そのビデオがこちら。


Jane Zhang - Dust My Shoulders Off

アフリカンっぽい音楽にヒップホップ風ビート。
プロデュースはあのTimbalandということで、完全にUSマーケットを狙いに来ている。
音楽としては00年代初頭のBoomkatやNelly Furtadoっぽく、曲単位ではMichelle Williamsの「Better Place」なんかと並べても面白いと思う。

しかし、何と言っても凄いのはこのビデオの凝り具合である。
昔はこの程度の予算のビデオもよく作られていたが、この時代に中国の歌手発信で、こんなに高予算なビデオにお目見えできるとは思っていなかった。
近年予算の高そうなビデオをつくる人と言えばTaylor Swiftだが、彼女のビデオと比べても遜色ないくらいの豪華さだ。

ゴッホやミレー、ムンク、アンドリュー・ワイエス、ダリ、エッシャー、エドワード・ホッパー――。
時代や国をまたぎ、様々な絵画の登場人物に扮するジェーン。
よくここまで絵に似せたものだと見る者を感心させるメイクに衣装にスタジオセット。
冒頭と終わりの場面については、美術館で通話するなよと突っ込みたくはなるが、そこはご愛嬌。

アジア人がこういった音楽をやるときは、創造性に賭けるか、米国人に倣うか、民族性を武器にするかという問題がある。
このビデオは創造性に賭けた形のもので、他のアーティストで言えばきゃりーぱみゅぱみゅもこの部類だろう。

次のシングルはトラップ系で攻めているが、全米狙いのジェーンの次なる一手となるのか、結果は果たして。