2014年7月14日月曜日

平面的CG系の音楽ビデオ

ブルーバックやグリーンバックの前で歌手を歌わせて、背景に映像を追加する音楽ビデオは古くからあった手法だ。
他の音楽ビデオの撮り方といえば、街中で歌って踊るものや、美術担当の人がセットをつくってそこで歌って踊るものがある。



街中で撮影を敢行するタイプのビデオが一番製作費が安そうだが、グリーンバックもなかなか安そうに見える。しかし、今は反対にその安っぽさを利用してDIY的なプロモーションビデオをつくる人もいる。



ノルウェーの男性シンガー、Bernhoftの新しいビデオが、きゃりーぱみゅぱみゅ的なグラフィックのビデオだったため、こういったグラフィック重視の音楽ビデオを調べてみた。




恐らく70年代~2000年代を調べればもっとあるだろうが、いかんせん昔の音楽に詳しくないため諦めた。また、他ジャンルであればもっとあろうが、それも詳しくないの諦めた。



グラフィカルな音楽ビデオ(ABC順)

Azealia Banks / Atlantis
安っぽい。「アトランティス」ということで海がベースになっているが、登場するものがナンセンスでシュールレアリスムス的。

Basement Jaxx / Back 2 the Wild
彼らにしては珍しいタイプのビデオだと思ったのだが、「野生時代に戻ろう」ということで古代がテーマ。やはり見せ方がクラブライクというか、チカチカする色合いをしている。

Bernhoft / Wind You Up
前出のノルウェー出身の男性シンガー。ロックバンド出身とは思えないソウル寄りのポップ歌手としてソロ活動をしているが、この曲でグラフィカルビデオデビュー。一応場面が歌詞と連動しているが、手や唇が多用されているのが特徴。彼自身も体を張って色々な表情を見せている。

Black Eyed Peas / Like That ft. Q-Tip, Talib Kweli, Cee-Lo, John Legend
インディーズのヒップホップバンドのアルバムみたいな、カーキ色・赤紫色・こげ茶色の親しみやすい色使いで、グラフィティ的な映像を展開している。

Cheryl Cole / Fight For This Love
「この愛のために戦う」というテーマにより、赤・黒・白といった古代の祭祀的な色を使って、もやや血しぶきを思わせるような色の塊が散見される。

Gnarls Barkley / Crazy
白い紙にインクで描いたような左右対称のCee-LoとDanger Mouseが展開される。切り替わりが早いので、見ていても飽きない。

Jamie Cullum / Get Your Way
イギリスのジャズシンガー、Jamie Cullumが弄ばれるビデオ。大学で英文学と映像を学んだ彼。今作は何かのオマージュなのか、是非尋ねてみたい。

きゃりーぱみゅぱみゅ / にんじゃりばんばん
日本からのエントリーはきゃりーぱみゅぱみゅ。基本的に彼女のビデオはセットでの撮影が多く、平面的な展開が多く、意外とフル合成作品がない。彼女のヒット作「PONPONPON」は沢山の人を魅了したが、実際あのナンセンス&カラフルな世界観は先のAzealiaやBasement Jaxx、Bernhoftのビデオにも影響しているのではないかと思う。

Lily Allen / Sheezus
イギリスの現代批判的な作風の歌手、Lily Allenの復帰作からのシングル。ストリートライクな格好に、赤や青やピンク、紫のエフェクトがかかって、多少目に刺激的なつくりになっている。

Madonna / American Life / Get Together
初めに作ったアメリカ社会に風刺的だったビデオが発禁になった関係で、急きょ作った代理のビデオが今見られる「American Life」のビデオだが、万国旗の前で歌うマドンナというシンプルなつくり。「Get Together」は彼女のライブ映像を赤紫のエフェクトで世界観を再描写したもの。

Matisyahu / King Without A Crown
ユダヤ系レゲエシンガーのMatisyahuの初期のシングル曲。茶色や灰色の背景に、黒で描かれるバンド、白地の歌詞。社会派ラッパー的なアプローチをとっている。

M.I.A. / Galang / Jimmy / XXXO
スリランカ系のイギリス人芸術家・歌手のM.I.A.。元々ファインアーティストで、他のアーティストのアルバムカバーや映像を担当していた。「Galang」は彼女の初期作品である戦争をモチーフとしたステンシルアートを背景としていて、「Jimmy」は音に合わせてインド風の振り付けを行い、「XXXO」ではペガサスや薔薇、白鳥、湖などが登場し、ファンタジックでアダルトな世界観を展開する。決してナンセンスではなく、セクシーでない女の子が、彼氏にセクシーな女になるよう求められるという当惑を上手く表している気がする。

Rihanna / Rude Boy
前にも投稿したMelina Matsoukasがディレクターを務めたRihannaのビデオ。当初「M.I.Aっぽい」と批評されたが、Melinaは「ラスタの文化と80年代ATARI(アメリカのビデオゲーム会社およびそのソフトウェア)にインスパイアされている。」と語っている。やっぱりこういう構図や色使いを用いると誰もがM.I.Aっぽいと思ってしまう。

Rye Rye / Boom Boom
M.I.A.のレーベルからデビューしたラッパーのRye Ryeのシングル。コンピュータグラフィックスの安っぽさを利用したビデオで、2D格闘ゲームでRye Ryeが勝ち進んでいく話だが、歌詞とは全く関係ない。

Santi Gold / Big Mouth
長らくライティングを担当し、音楽業界の裏方にいたSanti Goldの二作目からのシングル。色鉛筆で手書きしたような背景に、彼女とアフリカンダンスを思わせる踊りを踊るダンサーたちの平面的構図。色の点滅などが激しく、目に刺激的。

Will I Am / Feelin Myself ft. Miley Cyrus, Wiz Khalifa, French
Will I AmおよびBlack Eyed Peasが最新テクノロジーを好んで使ったり、未来的な描写を好むようになったのはいつからだろう。今作もデジタルな世界観をモチーフとしたグラフィックが展開される。



CG合成のビデオは、セットではつくるのが難しい世界観を描写したり、予算を低くビデオをつくるのに役立っている。

2014年7月5日土曜日

グレースケールのCDジャケット

Joss Stone、Adele、Duffy、Emeli Sande、Jessie Ware、Daleyなど最近のソウルから影響を受けたブリットポップのCDアートワークには、白黒などのモノクロームデザインが多いなと感じる。




このアーティストたちの共通点は今最先端の音楽を追及するというより、昔のリズム&ブルースや90年代のヒップホップの影響を受けたソウルといったグルーブ感やリズム、メロディが豊富だったブラックミュージックを踏襲しているといったところだろうか。




あまりにもモノクロデザインが多いので、もはやグレースケールのアルバムジャケットを見ると、「大体こんな音だろうか」と想像ができるくらいである。
ジャケットはアーティストのイメージのほか、アルバムのコンセプト、イメージも伝えるので、とても大事だ。
アーティスト写真なんかよりも、ファンや視聴者にとっては断然アルバムジャケットの方が眺める時間が長い。




試みに上記のアーテイストを担当したアートディレクターを調べてみたが、全員違う。ということはやはり白黒の二色使いはある種のお決まりとなっている可能性がある。特にJessie Wareのデビューアルバム「Devotion」を担当したKate Morossoは、普段はビビッドなポップアート的アプローチを採るアートディレクターである。そんな人がJessieのアルバムにあえて白黒を採用したのだから、間違いない。




Adeleの「19」、「21」のデザインを担当したPhil Leeは「最近挑戦したことは何か」と訊かれて、
“In recent times, it was convincing Adele to go with my suggested shade of green for numerals on the 21 album cover.”
と答えていた。




確かにAdeleの「21」には白黒の他に、数字に暗めの黄緑色が差し色として使われている。
Adeleはこんな1色にもこだわっているのだなと感心した。
「19」のアートワークの色使いはロイヤルミルクティーの色と白黒だった。彼女のブロンド、肌、数字、そしてCDの色がすべて近似色だった。




Mark Ronson系のごりごりのback to basicsでもなく、ちょっとだけ古いくらいのGood Musicを採用するアーティストのジャケットは今後も白黒の二色使いが増えそう。