2015年6月11日木曜日

ビヨンセの曲「バウ・ダウン」のストリート性

Beyonceの2014年のシングル曲“Flawless”は、彼女史上トップクラスの問題作だった。
正確には、この曲の元となった2013年リリースの“Bow Down/I Been On”という曲こそが問題作だった。



「ずっと前からここに君臨してるんだから、私の前にひれ伏しなさい」と歌うこの曲は、Beyonceらしくなかった。
小生意気な女性ラッパーのように聞こえるのは、生まれのテキサス州ヒューストンにも言及しているからかもしれない。



生来、内向的で大人しいこの美女は、しかし過去にも時に同業者を大胆に挑発した。
デスティニーズ・チャイルド時代の“Survivor”やソロでの2008年のシングル曲“Diva”などが好例だ。



この勝気さは何なのかと考えたところ、やはりこれはストリート性の模倣だと思う。
ストリート文化とは、しばしば周りを気にしない独善性を大言壮語する。
ストリート性の強いヒップホップにおいては「I am the king of hip hop」や、「I am the best around」などと言って、競争相手がいたものなら口撃する。



この無法的で、原始的な威張り合いはグラフィティおよびストリートアートにも継承されていて、Beyonceの“Bow Down”で思い出したのが、ストリートアーティスト、シェパード・フェアリーの作品“OBEY”である。






陰鬱な男の顔の下に「従え」とあるその謎の張り紙は、その文言が「従え」だからこそストリートアートの流儀を保っている。
例えばそれが“HELLO”だったとしたら、何の方法論も持ち合わせていないことを露呈する。



Beyonceの“Bow Down”に反応したのは2004年デビューの熱唱系シンガー、Keyshia Coleだった。
よほどBeyonceを意識していたのだろう。


First "Women need to Stick together" now bitches better Bow. Smh. But it's all G! Chicks stay shooting the shit. But when I speak my mind its a prob.


とツイートし、Beyonceの一味、ビーハイブの返信によってtwitterが炎上する。
しかし、挑発には挑発で返し、相手のグラフィティのタグには自分のタグを上書きするのがストリートのマナー。
Keyshiaはストリート流の方法を選択したに過ぎない。



では、当のビヨンセはなぜこの曲を出したのか。


The reason I put out 'Bow Down' is because I woke up, I went into the studio, I had a chant in my head, it was aggressive, it was angry, it wasn't the Beyoncé that wakes up every morning. It was the Beyoncé that was angry. It was the Beyoncé that felt the need to defend herself.


単純にご機嫌斜めだったようなのである。