2015年10月4日日曜日

メラニー・マルティネスが批判する美容整形社会

一重まぶたの人が「プチ整形」手術を経て二重まぶたにする。
臀部や胸部にインプラントを入れて大きくする。
方や日本、方やアメリカで流行の整形手術である。



十代、特にアイデンティティー確立期には多くの人が多かれ少なかれ自分の容姿に悩むものだ。
「君ってあの芸能人に似てるよね」と言われただけで、大抵意識していた自分の像と違い、悩んでしまったり、人と自分の顔を比べてしまったりするのだ。



年を重ねれば徐々に自己像が確立され、人々の容姿の悩みは鼻の高さやまぶたの形から、次第に肌の綺麗さや外科的老化対策に移行していく。
しかし、若い時期は日々自己否定との闘いであり、ちょっとした言葉や周囲の動きによって傷つき、自信を喪失するものだ。



アメリカのオーディション番組「The Voice」出身のMelanie Martinezは番組から3年を経て、ようやくデビューアルバム「Cry Baby」をリリースした。
本作は「Cry Baby」という人格が、恋愛・失恋・自信喪失・自己確立をするストーリーに沿ったコンセプトアルバムとなっている。



その中の収録曲「Mrs. Potato Head」で、Melanieは整形手術が手軽になってきている昨今の風潮へ疑問を呈する。
ツートーンの髪色をし、カラフルな刺青を入れ、子供時代の玩具や遊園地をモチーフにした彼女の作品世界は、いかにも物質主義的を推進しているように見てしまいがちだが、意外にも反美容整形を訴えている。



Lady Gagaがプラスティックな美を謳歌したり、KeshaやM.I.A.が早死にを賛美するような歌を次々出したのがすでに数年前のこと。
時が経つと、やはり人々は冷静になるようだ。
産業が煽る偽りの美、揺らぎやすい自己に厚塗りされた新しい面皮がフラッシュでまばゆい赤い絨毯の上を跋扈する時代に対して、19才は冷静である。



「愛する人が整形手術を受けて、ミスター・ポテトヘッドのおもちゃみたいに顔がバラバラになっても、一生添い遂げますか?」と、アルバムのテーマである玩具に絡めて疑問を投げかける。
見た目で人は判断できないということを彼女自身が体現しているかのようだ。