2014年8月31日日曜日

MTV VMA 2014

8月24日、MTV Video Music Awards 2014が米カリフォルニア州イングルウッドで行われた。
自分的に面白かった点は以下。



  1. Nicki Minajのパフォーマンスを唖然とした顔で見るRita Ora。Ritaって結構Rhiannaの刺客的な立ち位置だと思ってたのだけど、Nickiの巨尻の振動に完全に引いていた。品格を重んじる英国育ちにはきつかったか。それともこれはNicki VS Iggyのビーフの延長で、Iggy側のRitaとしてはそういう目つきになってしまったのか。
  2. Jessie J、Ariana Grande、Nicki Minajの“Bang Bang”におけるJessieの存在感と、ドレスを気にしてフライトアテンダントばりの不自然な良い姿勢でラップするNicki。
  3. ホームでの開催で威厳を放つSnoopとGwen Stefaniの西海岸組のBest Female Videoプレゼンター。更にKatyが受賞し、完全に西海岸組がステージを制圧する。
  4. 昔の大衆音楽みたいな、品質がほんわかゆるめなTaylor Swiftのステージ。
  5. Adeleのステージを彷彿させるSam Smithのシンプルなショー。
  6. いつの間にやらKatyの隣に座っているSam Smith。
  7. 喋らせるとやはり何かがおかしいLorde。
  8. 仕込み感があるけど、でも面白いJimmy Fallonのプレゼンでの催し―Hug cam、high five cam、give the person next to you 5 dollars cam。
  9. 今年はチャリティー、Miley Cyrus。
  10. ビヨンセの10分以上に及ぶビデオショー。



ところでここ数年のVMAのプレゼン映像が好きだ。
やはりアメリカはグラフィック制作技術の頂点の国だし、たかだか数秒の映像にも趣向を凝らした本気の作品を使うのだろう。



今年は地層学的な図表で見そうなデザインの円環状のものが海に浮かんでいる映像だった。
よく見ると、次に紹介するビデオに登場する色に合わせたレイヤーの円環となっている。
Siaの「Chandelier」は肌色、ピンク、クリーム色、Beyonceの「Drunk in Love」はグレースケールだ。



なぜ地層的な円環なのだろう。
そういったビデオがあったわけでもなく、流行があったわけでもない。
と考えると、地層はカリフォルニアの干ばつにより露わになったダムの山肌、円環は会場のThe Forumが丸いからか、ご当地のドーナツ屋さんRandy's Donutsのシンボルではないかという、かなり強引なこじつけを思いついた。



でもデザイナーの着想って、わりと論理ではなく感覚的なところがあるから、あながち間違いでもない気がした。




2014年8月20日水曜日

ファレルの曲の始まり方が一辺倒な件

あるとき、Paloma Faithの『Can't Rely On You』を聴いた後で、Jennifer Hudsonの『I Can't Describe』を聴いたときのこと――。


Pharrel Williamsがプロデュースしたこれらの曲を聴いていて、既視感ならぬ既聴感を抱いた。
どちらも同じく、四拍のビートを最初に挟んでから曲が始まる。


他にこういう始まり方をする曲といえば、パッと思い浮かぶのはGnarls Barkleyの『Crazy』やEveの『Figure You Out』くらいだ。


まさかPharrellのプロデュース曲はこんな始まりばかりなのではないか。
そう思い立って調べてみた。


すると、あるわ、あるわ、最近だけでなく数年前からこの手の技を使っていたようだ。
ここにPharrellプロデュースの主な四拍のビートで始まる曲を列挙したいと思う。

Kelis - Milkshake
Usher - Twisted
Conor Maynard - Contrast
Pit Bull - Jeaulouso
Gloria Estefan - Say Ay
T.I. - Hello
Kelly Rowland - Feet To the Fire
Jay Z - BBC
Mayer Hawthorne - Reach Out Richard
John Legend - Aim High
Nelly - Maryland, Massachusetts
Miley Cyrus - 4 x 4, #GetitRight
Kylie Minogue - I Was Gonna Cancel
Robin Thicke - Blurred Lines
Azealia Banks - ATM Jam
Paloma Faith - Can't Rely On You
Jennifer Hudson - I Can't Describe

更にPharrell本人の曲だと
How Does It Feel?
Raspy Shit
Best Friend
Angel
Young Girl/ I Really Like You
Take It Off
Stay With Me
Happy
Marilyn Monroe
Brand New
Hunter
Happy
Gust Of Wind
Know Who You Are


こんなにあるのだ。
数えてはないが、全プロデュース曲の半数近くはあるだろう。


このことは複数のインターネットメディアが報じていて、中には「Pharrell can't write good intro」などという声もあるようだ。


一方で、これはPharrellの落款だという意見もある。


音楽における落款と言えば、Rodney JerkinsやMissy Elliottなどのプロデュース曲で本人や歌手が「Dark Child」や「Missy」などと名を囁く、あれだ。


Pharrellの場合は名乗ることもなく、四拍刻んでから始まる。
音楽を奏でる者、音で勝負ということだろうか。


この四拍は一体何か、考えてみる。
楽器でこういう音を出すことがあるのは、ドラムだ。
曲を始める合図に、スティックで拍を取る。
それなら、この四拍のビートはフロアに対する準備の合図か。


では、この効能はなんだろう。
四拍打つことで、後の疾走感の予兆を伝えてくれる。


多分それは、ジェットコースターやF1のスタートシグナルなどの興奮体験を彷彿させるからではないだろうか。


しかし、これだけお決まりの始まり方をしてしまうと、四拍のビートから曲が始まることが「Pharrell」と呼ばれる日が来るかもしれない。
頭に巻くターバンがアフリカでBaduと呼ばれたことがあるように。

2014年8月2日土曜日

レディー・ガガとアンディ・ウォーホル

Lady Gagaが出てきたとき、若い世代からは斬新だと受け止められたが、その他の世代では色々な人が既視感を訴えた。
Madonnaは
She is obsessed with me
と言い、Grace Jonesは
I'd rather work with someone who is not copying me
と突き放した。



それはまるで、映画『千と千尋の神隠し』が上映された後に、複数の観光地が映画の舞台になったと主張したときのようだ。
結局映画の世界観はどの候補地にもどことなく似ているが、瓜二つの場所はなかった。
Lady Gagaも同様に、Madonnaの生き写しでも、Grace Jonesの後釜でもない。



しかしながら、彼女がもっともっと強く意識して模倣した人がいた。
それがAndy Warholである。
彼女のデビューアルバムはGaga本人は「80年代、ニューヨーク、執念」がテーマだと言ったが、それはさしずめAndy Warholという現象そのものであった。



3rdアルバム発売に際し、公式に「The intention of the album was to put art culture into pop music.」であるため
ARTPOP is reverse of Andy Warhol.
だと述べたGaga。
1stのAndyの模倣を知っている人には、これ自体には新鮮味はない。



Andyの名言集『とらわれない言葉』(アンディウォーホル美術財団編、青志社、2010年)からの言葉とGagaの1stの歌詞を見比べてみよう。



プラスチックについて
p118
ロサンゼルスが好きだ。ハリウッドが好きなんだ。美しいよね。みんなプラスチックみたいで。
僕はプラスチックが好きなんだ。僕もプラスチックになりたい。

PAPARAZZI
Real good, we dance in the studio
Snap, snap to the shit on the radio
Don't stop for anyone
We're plastic but we still have fun

BEAUTIFUL DIRTY RICH
We live a cute life
Soundfanatic
Pants tighter than plastic, honey
But we got no money



名声について
p166
誰もが15分間なら有名人になれる、いずれそんな時代がくるだろう。

THE FAME
I can't help myself
I'm addicted to a life of material
It's some kind of joke
I'm obsessively opposed to the typical
All we care about is, runway models, Cadillacs and liquor bottles
Give me something I wanna be, retro glamour
Hollywood, yes, we live for the fame
Doin' it for the fame
Cuz we wanna live life of the rich and famous



Andyはこれだけにとどまらず、ファッションや最新機器などについて、時代の先端的思考を持っていた。
Gagaはそれを再利用し、イビザのクラブ風の音楽に乗せて、クラブ文化と融合した。
有名になりたいという欲望が、SNSを通してさらに黒い怪物と化すのは、Gagaデビューからすぐの先進国でのことだった。
リバイバルとはいえGagaのコンセプトは、テレビが人々の注目を集めたAndyの時代と違い、SNSが人々の名声欲を強める時代を先読みしていたかのようであった。