2014年4月6日日曜日

リベット工員ロージー

日本の戦中の標語をご存じだろうか。
「欲しがりません、勝つまでは」
「撃ちてし止まん」
「贅沢は敵だ」
「月月火水木金金」
「万世一系 億兆一心」
などたくさんの仕方で呼びかけがなされた。





当時の敵国、アメリカはどうだったかというと、当然アメリカにもあったのだ。
"Victory waits on your fingers."
"YOU talk of sacrific. He KNEW the meaning of sacrifice."
"Stay on the job until every murdering Jap is wiped out."
"She may look clean but spreads syphilis and gonorrhea."
などなど。


兵隊志願者を募るものから、売春婦の性病の流行を注意喚起するもの。
勤労を呼び掛けるものから、食べ物を粗末にするなというものまである。



他にも当時出回った架空の人物がいる。
それがRosie the Riveter。
「リベット工員ロージー」といった意味のこのキャラクター。
いわゆる前線に立たない「銃後」を鼓舞するためのものだった。





<背景>
リベットとは鋲を打つ工程らしい。
男たちが戦地に向かい、手薄になった工場のため女たちにも求人が出た。
女の労働力がとても大事になった。





<初見>
アメリカにて1942年に「Rosie the Riveter」が発売された。
これは複数の歌手や演奏者により曲としてCD化された。
このような歌詞を含む。
All the day long,
Whether rain or shine
She’s part of the assembly line.
She’s making history,
Working for victory
Rosie the Riveter






<平行する物語>
ちょうどそのころ、ミシガン州の一人の女性が工場を立ち去ろうとしていた。
Geraldine Hoff Doyle。
彼女は高校を卒業したばかりのしがない一介の女工だった。
チェロをたしなむ彼女は手に危険な仕事をしたがらなかった。
2週間働いた工場を辞める頃、ある啓蒙ポスターのモデルになる。
それが有名な"We Can Do It!"であった。
必要以上に人員を雇えない。
だから今いる人員で工場を回さなければならない。
だから「私たちにはできる!」なのだ。



しかしこのポスターは当時、その地域に出回っただけだった。





<影響>
男性専用の仕事への女性の進出は一時的なものと見られていた。
確かに戦後、女性の就業率は下がった。
しかし、女性の社会進出体験はその後の女性雇用への大きな下地となった。
また、多くの黒人女性も採用されたため、黒人の社会進出も助けた。





<文化>
1970年代になり、女性の就業率が再び上昇する。
このときに、フェミニズムが勃興し、戦中の女性就業現象が見直される。
そして上の"We Can Do It"ポスターが初めて全国的に注目を集めた。
楽曲"Rosie the Riveter"とは無関係なポスターが、同一視され始めた。
強い女の代名詞として、"We Can Do It"は様々な人にモチーフにされた。



有名どころだと以下がある。
P!NK Raise Your Glass ビデオ
Christina Aguilera Candy Man ビデオ
Beyonce Why Don't You Love Me ビデオ





<まとめ>
Rosei the Riveterは戦争を工場から支えた女工を指す、社会現象の名だ。
これによって男性専用だった工員が女性でも出来ることが証明された。
雇用機会の性差に社会が疑問を呈するきっかけとなった。





<感想>
こういう風に見て行くと、我々は依然として「戦後」に生きている気がする。
自分は雇用機会に差別はあってはならないと思う。
しかしながら、実際は書類で、面接で落とされる。
だから働き口が見つからない人は主夫(婦)になることが生活の効率が良い。



ちなみに経済学的雇用問題では家事を行う人は非労働力には入らない。
(就職活動をしていたら失業者という枠に数えられるが)
家事はそれほど、立派な「仕事」なのだ。
だから二人寄り添って、二人分の稼ぎのある人が働き、ない人が家事。
それが理想であるが。



男女差ではなく個体差の方が大きいとよく言う。
たとえば昔は男と女では、男の方が良く働けたかもしれない。
でもバリバリ働く女と根性のない男。
(もちろんバリバリ働く男と根性のない女の方が差は大きいが)
こういった個体差が現代は広がりつつある。
性別の雇用機会が平等になれば、個体差で就職の差はついてしまう。



つまり、良く働く女に勝てない男は、主夫をする時代に近づいてきたと思う。
専業主婦(夫)のバリアフリーがもっともっと進む気がする。
あるいは、実家暮らしの子がいる両親の早期退職&専業夫婦化。
更には友達同士で住んで支え合ったりもできる。
そのようにして労働人口を循環させないと、社会は回らない。
家事をする職業を堂々と多くの人々が口にできる日が来てほしいと思う。

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