2014年6月10日火曜日

時間がない歌手、ネリー・ファータド

カナダの歌手、Nelly Furtadoと聞けば、何を想起するだろうか。

自由、強い意志、若者の揺らぎや過ちなどをテーマにした歌詞に、レゲエの影響が垣間見れる鼻にかかった牧歌的な明るさを帯びた歌声。

カナダという多文化国家におけるポルトガル系出自という民族性が、マイノリティ的反骨精神を生みだしている。

マイノリティであるが故に、それを完全肯定して謳歌する。
「Well, Well」、「I'm Like A Bird」、「Fresh Off the Boat」、「The Grass Is Green」はそんな足場のない浮遊感を高みに変換して、陽気に世間を見下ろしたような曲である。

「Trynna Finda Way」、「Picture Perfect」、「Saturdays」、「Bucket List」は強固なアイデンティティがないが故の「自分探し」と、その中での揺らぎを歌った曲。

若さの中で荒ぶる感情と、ありあまる時間をもてあそぶ欲望をテーマにした「Explode」、「Parking Lot」。

でもやはり夜には孤独と恐怖が影を降ろすのは
「Turn Off the Light」、「Scared of You」「One-Trick Pony」、「Afraid」、「Enemy」で歌に込めている。

こう俯瞰すると、すべての曲に孤独が共通している気がする。
そして、その中でよく出るフレーズがある。
それは「時間がない」ということだ。

こんな言葉は、テレビの中の婚期を逃した自虐的な女性タレントかネリーの口からしか聞けない言葉だろう。

まさにこの言葉が、彼女の人生観を表している。

「時間がない」=老いる

若さに重きを置いた生き方。

これはいかにも現代アメリカ的な生き方である。
Ellen Degeneresもグラミー賞授賞式の司会の際に

「I'm not saying movies are the most important thing in the world because we all know the most important thing in the world is youth.」
と言っていた。

何度も同じことを何年も繰り返し鍛錬し、成熟を図る「道」の文化をもつ日本では、
まだアメリカほど若さが重視されていない。

若さに生きるのも一つの生き方、老成するのも一つの生き方。

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